ポストリュックサック

巷では老若男女、皆リュックサックを背負っている。

これは日本に限ったことではなく、ほとんどの先進国に見られる社会現象。

では何故現代人はリュックサックを背負うのか。理由を聞けば様々な答えが返ってくる。

 スマホを常に操作するため パソコンを持ち歩くから

両手が使え安全だから 手が疲れないから 運動が好き

自転車に乗るから 等々。

しかし、少し前までリュックは軍人や登山家の道具であって、日常使いは考えられなかった。現在のような日常でリュックを背負う習慣は、80年代になり欧米で見られるようになった光景で、はじめはワシントンの大学生たちから広がったと言われている。

しかし我々現代人がリュックを選ぶのは上記のような合理性や機能性だけではないはずだ。

そこには社会が豊かになる一方で、資本主義の陰りから噴出してきた多くの矛盾、先の見えない生活への不安心理などが影響しているように思える。大袈裟に言えば登山家の今を生きる覚悟のようなものが、都会のリュックを背負う人々にも感じられる。

このようにモノの流行やデザインには、人間の奥底の心情、社会情勢が複雑に入り組んでいる。

都会の喧騒の中でスーツ姿ながら大きなリュックを背負う若者を見るにつけ、彼らがひらくであろう新しい社会は「捨てたものではないな」、そんな希望を脳裏にちらつかせるのもリュックという道具の不思議なところである。

「Post Rucksack」2021モチハコブカタチ展

「10年後、私たちは一体何をモチハコブのか」という問いに学生たちが答えた展覧会である。この「モチハコブカタチ展」は、東京芸術大学とエース株式会社による社会連携のプログラムで、2012年から毎年開催、今年で10年目の節目を迎えた。